【行ってきた】太田記念美術館「かわいい浮世絵 おかしな浮世絵」スライドトーク

東京都渋谷区、原宿駅から歩いて5分ほどの場所にある浮世絵専門の美術館「太田記念美術館」に行ってきました。お目当ては動物を描いた浮世絵です。ただ鑑賞するだけではなく、より深く理解するため、今回は1月10日(木)に行われた学芸員さんによるスライドトークも聴講してきました。

かわいい浮世絵 おかしな浮世絵

太田記念美術館では、2019年1月5日(土)から27日(日)まで、「かわいい浮世絵 おかしな浮世絵」という企画展が開催されています。太田記念美術館を訪れるのは初めてでしたので、1階、2階、2階の覗きケースをじっくりと回ることができ、新鮮な気持ちで大変楽しく鑑賞できました。

今回の企画展は、犬や猫、うさぎやスズメなどの動物だけでなく植物や野菜(!?笑)などが登場する浮世絵を集めた「かわいい生き物・おかしな生き物」ゾーンと、無邪気な子供の姿を集めた「かわいい子供たち」ゾーン、それから「ぷっ」と吹き出してしまうような「おかしな人々」が描かれた浮世絵を展示するゾーン、さらには「かわいい!奇抜?江戸のデザイン」ゾーンと、全4つのゾーンで構成されていました。

太田記念美術館
太田記念美術館 2019.1.10撮影

東京国立博物館で歌川広重の「名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣(あさくさたんぼとりのまちもうで)」を見て以来、この浮世絵をとても気に入っていましたので、またここで別の浅草田圃酉の町詣に出会うことができ感動しました(調べてみると江戸東京博物館も所蔵しているのですね、いつか見比べをしたいものです)。いつ見ても、この短すぎるしっぽと、目を細めているのか不機嫌なのか眠いのか判断しかねる横顔が「かわいい」ですね。まったく見たことも聞いたこともない浮世絵をたくさん知ることができ、非常に良い時間を過ごせました。

見どころ発見、スライドトークが大人気

1月10日(木)に行われた学芸員の渡邉さんによるスライドトークは、今回の企画展の見どころを解説するもので、当日は平日にも関わらず立ち見が出るほどの大盛況でした。14時開演のところ、13時40分に入館受付で料金を支払い、早足で地下の視聴覚室へ向かいましたが、すでに10席ほどの空きしかなく…。結局、50分すぎ、55分ごろまでには満席となり、最後には6,7名の立ち見も出ていました。

実際のトーク時間は約40、50分。展示している作品の中から約30作品ほどをピックアップされ、1枚ずつ渡邉さんが解説されました。どういったシリーズのうちの一作なのか、といった作品背景のほか、浮世絵に描かれた場面の見どころをユーモアやするどいツッコミを交えながら解説してくださり、会場からは時折笑いがおきました。

そばをこぼして「たいへんたいへん」…イノシシはどこ?野菜と魚介類の戦い

見どころ解説は大変勉強になりました。たとえば、先述の通り筆者お気に入りの「名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣」は、遊女屋の格子窓越しに猫が酉の市の行列を眺めている…というところまでは知っていたものの、よくみると画面左下にあるかんざしにも熊手がデザインされている、という点や、そもそもこのかんざしは男性客が持ってきたものなのかも、と推測できる点など、1枚の絵からさまざま想像できることが分かりました。

歌川広重 名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣
歌川広重 名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣

浮世絵好きな方なら、そのような知識もきっとご存知なのかとは思うのですが、スライドトークは「トーク」というだけあって「トーク」自体もおもしろかったので(笑)、今回の企画展へ行こうと考えられている方には「必聴ですよ!」とオススメしたいです。筆者としては、登場人物(登場“猫”物か…笑)が全員猫の四代歌川国政「志ん板猫のそばや」や、今年の干支であるイノシシはどこにいるのか探した歌川芳虎「家内安全ヲ守 十二支之図」などは、初見かつ解説があったからこそなお楽しめた作品でした。

スライドトークだからこそ聴ける“裏話”

加えて、「野菜と魚介類の戦い」と説明された歌川広景の「青物魚軍勢大合戦之図」や歌川国貞(三代豊国)の「極暑遊び」は、浮世絵だけでなく当時の江戸や江戸風俗、歌舞伎に関する解説もあったため、時代物のお話や落語などが好きな方も楽しく聴講できたのではないでしょうか。さらに、展示室の解説パネルについても、ある絵に関する解説を「●●●の模様」から「●●●を彷彿とさせる奇抜な模様」と書き換えるに至ったエピソードもおもしろかったです。笑

なお、太田記念美術館はTwitter活用が積極的で、時季やトレンドにあわせた浮世絵紹介を行っているのだとか。野菜が歌舞伎をしているある一枚の浮世絵については、Twitterの投稿がきっかけで長年の謎が解けた、という逸話もあるそうです(解決された方はすごいなぁ…)。この話はもっとも会場が湧いた瞬間だったように思います。笑

スライドトークは残すところ1月14日(月祝)と23日(水)の2回だけ。きっと混雑することと思うので、座ってお聴きになりたい場合は早めに行くのが良いかもしれませんね。しかしながら、聞き逃してしまった場合でも、展示室内の解説パネルがとても詳細なので、退屈することは100%ないと思います。個人的には「かわいい」要素が少なめだったので(これは実際に学芸員の渡邉さんもおっしゃっていました^^;笑)、過去に開催されたという「浮世絵動物園」展も見たかったなーと感じました。展示は、ご縁ですね〜。

らく@staff
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