【読んだ】HSPへの処方箋…「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本
「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本
著:高田明和
出版社:廣済堂出版
ささいなことで思い悩んだり、クヨクヨしたり、他人に振り回されてしまったり…。実際にその人が「言った」という事実は一切ないのに、その人が「言ったように聞こえて」しまって、さらに落ち込んだり、その人を「嫌な人」「怖い人」だと思い込む…。そういった「生きづらさ」に悩まされており、本書を手に取りました。
本書では、「Highly Sensitive Person(ハイリーセンシティブパーソン:HSP)」、日本語で「敏感体質」の人が抱える生きづらさの原因や症状、対処法を解説しています。
第1章では敏感体質の人に見るケーススタディ、第2章ではHSPそのものの原因と症状、第3章から最終章の5章までは対処についてまとめられており、「HSP」「敏感体質」について初めて知る、聞く、学ぶ人には最適な入門書です。
敏感体質の人ってどんな人?
HSP・敏感体質の人のことを、同書内では明るい表現を用い「チョー敏感な人」と称しています。通常ならば「虚弱体質」「粘着体質」など、「○○体質」と付く言葉にはなんとなく負の印象を抱いてしまうところ、普通の人の何倍もの敏感さ、繊細さを持っている人のことを前向きに表しているのは印象的でした。
HSPの考えを提唱したアメリカの心理学者、エレイン・N. アーロン博士の研究に基づき、敏感体質の人の特徴として著者は下記を挙げています。小見出しとして抜き出されていたものや、本文内から拾えるものを箇条書きで示します。
- 話している最中にふと相手の表情が変わったことに気づき、不安になる
- 恋人やパートナーの言いなりになる(パートナーの思っていることが実際に「聞こえて」くる、という現象も含む)
- 態度の大きい人、自信たっぷりの人の態度、言葉に逆らえない
- 人の影響を受けやすい
- 他人からの異なる評価がいちいち気になる(言葉の捉え方が繊細)
- 自分への否定的な評価の声が実際に聞こえる
- 相手の思惑を忖度するクセ
- 大切なシーンで緊張して失敗が多い
- 仕事中、誰かに見られていると思うと失敗する
- 頼まれると断れない
- 音、匂い、人など目に見えるものに反応するだけでなく、「空気」や電磁波、「自分の身体の内部」、超常現象といった「目に見えないもの」にも反応する
上記のほか、多数の例が第1章「いつも誰かに振り回される」に収録されています。実際にあった例が具体的に記されているので、実例から「この例は自分と近い」「これは違う」と、「自分ごと」として考えながら読み進めることができます。
読み終えた結果、筆者の場合はHSPに当てはまるところもあるけど、多くは違うということがわかりました。よって、生きづらさの解決には他分野での検証―たとえば昨今ネットで話題の「境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)」や「自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)」など―が必要でしょう。まずは本書で「HSP」「敏感体質」について学べ、理解を深められたので、読後の満足感があります。
ひびいたキーワード「エナジー・バンパイア」
さて、この本…。著者は浜松医科大学名誉教授の高田明和氏です。自身も敏感体質に悩む一人で、同氏は場の「空気を読む」どころか、「空気の構造」まで見えてしまう繊細さを持っているのだとか。「はじめに」で明かされたことには、「格子状の空気」が部屋に広がっているときは、部屋にいる人たちから拒絶されているような、「入るな」と言われている声が聞こえてくるそうです。
自身もHSPに悩んだからこそ、同書はHSP・敏感体質の人(と、そうかも、と思っている人)をより深く理解できるのでしょうね。HSP・敏感体質の人にとってしっくりくる言葉で表現されている点や、その症状に悩む人から見た生きづらさの原因を描くのもとても“リアル”です。
特に胸落ちしたのは、下記の箇所。
「チョー敏感な人」にとって、彼らは自分のパワー、エネルギーを吸い取る「エナジー・バンパイア」=「悪霊」と言ってもいいと思います。
「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本(2017,廣済堂出版)高田明和 48ページ
こちらの元気・英気をすべて奪い取るような人、いるいる…。そしてそういう人と接すると、1日ずーっと悩んだり、数年後にやり取りを思い出したり、百害あって一利なし…。HSP・敏感体質の人にとって「飲み込みやすい」言葉でその実を説いた、「処方箋」の一冊だと思います。
本書ではHSP・敏感体質は「気質」で、その人がもっている遺伝的な特質だとされています。遺伝的なものであるから、抗えない点もあるものの、自分でできる対処法もしっかり提示されています。自分でなく、我が子がHSP体質である場合の例も数ページ紹介されています。
もし「HSPかも?」「人より繊細すぎるかも」と思ったら、ぜひ読まれてみてください。