人間、何度でもやり直せる【人間交差点 全19巻】自分だったかもしれない誰かを生きる

原作・矢島正雄さん、作画・弘兼憲史さんによる青年漫画。弘兼さんって聞くと「あ〜島耕作の漫画家さんか」との印象が強く、巨編シリーズの圧にやられてなんとなく他の作品も手に取りづらいところがある。そんななか、尊敬する人が大人買いしており、横取りして私も一気読み。まだ途中だけど、12巻まで読んで一言…。
「人間交差点」だけは読んだほうがいい。本気で。
この世の中において、本は2種類あると思う。ひとつは「読んだほうがいい本」と、もうひとつは「読まなくてもいい本」。
前者はもちろん、読めば知見が広がるし、自分の人生を変えるきっかけになるような本のこと。言葉にできないまま胸につかえていた石ころを一瞬で取り除いてくれたり、ちょっと賢くなったような気分になれるような、そんな魔法の本などのことを言うんだろう。
その一方、「読まなくてもいい本」ってのも、確実にある。読んだ時間が無駄になるような、読むだけで気持ちが暗くなるような…そんな本。その点でいくと、「人間交差点」は読後さっぱり、とはいかず、むしろハッピーエンド3割、バッドエンド7割という、なんとも救われない展開が多い点では「読まなくてもいい本」に分類されるかもしれない。でも、人生の“幸不幸比率”にぴったり合っているんじゃないかな?
そう思うと、これから起こりうる、もしくは自分に起こっていたかもしれない人生を追体験する、という点では、確実に「人間交差点」は「読んだほうがいい本」に分類されると思う。
島耕作より島耕作感あるな、と。
島耕作って、昭和のサラリーマンが女性を蹂躙しながら企業のテッペンを目指す漫画だと思っていて(時間があれば必ず読んでみたい)、なんとなく汗とホコリのイメージから読まず嫌いしていました。もう何巻あるかわからないし、今から読むだけの体力も怪しいからね…。
読んでいないのに語るのもおかしいのですが、きっと島耕作って「人間賛歌」の話ですよね?1980年代から1990年代の日本を舞台に、狂乱動乱の波に溺れながら、一人の男が成り上がっていくドラマ。
「人間交差点」はその時代にリアルタイムで連載されていた漫画なだけあって、当時の暗い空気感だったり、刺すか刺されるかのアナーキーな雰囲気も漂い、白黒テレビで当時を疑似体験できるような感覚を覚えます。まさに、島耕作感たっぷりの、社会派ドラマ漫画。戦争の歴史を引きずっている老人世代だったり、貧しかった日本が変えてしまった人々の運命に触れるたび、目を背けてきた日本の“裏面”に足を引っ張られるような…、そんな気分になる。
まっとうな精神状態じゃないと、ズルズル引き込まれて戻ってこれなくなっちゃうんだけど、人間ってやっぱ、簡単じゃないんだよな、生きているだけでも正しいんだよ。って、ショック療法のように元気をもらえる漫画でした。
基本的に1話完結、もしくは長くても前編後編が基本なので、どの巻から読んでもスーッと入ってくるのもポイント。通勤列車で読んだら危ない(死にたくなる。実際に通勤列車では読むのを辞めちゃったとの体験談あり笑)けど、静かに眠りたい日とか、しとしと雨の降る日に読むといいなあ。キャラ同士のつながりもないけど、1人だけ度々出てくる私立探偵のおっちゃんいるんですよね。息子との距離感がもどかしいけど、だんだんと距離が縮まっているようでよかった。
さて、13巻以降も読むか。2021年1月23日に「新・人間交差点」というテレビドラマ再放送があったようで、もっと早く知りたかった。見たかったな。
参考リンク:「新・人間交差点」
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/90000/440993.html