【講談】人間国宝・一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回に参加して…第二回情報

筆者のような講談ビギナーがこんなことを伺うのは笑止千万なのですが…、皆さんは重要無形文化財保持者(人間国宝)の講談師・一龍斎貞水(いちりゅうさい ていすい)先生をご存知ですか。東京都文京区湯島に生まれ、公式Webサイトによると現在も同じ場所にお住まいだという、講談界の神様のような方です。

講談と光や音の演出効果を融合させた舞台空間「立体怪談」の第一人者で、”怪談の貞水”との異名もとるとか。人間国宝のほか、講談師として初めてヨーロッパでの講談を行った講談師という”タイトル”もお持ちで、筆者のような凡人にとっては天上人のような方です。

先生は1939年(昭和14年)6月29日のお生まれということで、この記事を書いている時点では79歳なんですね。考えるだけでも嫌ですが、先生の講談を拝聴する機会は人生のうちにあと何回あるのだろうか。そう思うと、居ても立ってもいられず、1月から始まった連続講談の会「宇都宮釣天井」に出掛けて参りました。

一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回(2019年1月24日・木曜日)

寄席以外の講談へ行くのはこれが初めて。参加方法に間違いがあってはいけませんから、早めに会場へ向かいたかったものの、業務の都合で退社時刻が遅くなってしまい、泣く泣くJR四ツ谷駅からタクシーで湯島天満宮「参集殿」へ向かいました。

改めまして、参加したのは「一龍斎貞水 連続講談の会『宇都宮釣天井』第一回(リンク先は「公演のご案内」)」です。今後のスケジュールは、先生の公式Webサイトで参照できます。

一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回(2019年1月24日) 会場の湯島天満宮参集殿
一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回(2019年1月24日)
会場となった湯島天満宮参集殿

社会人講談玉井亀鶴のブログ KIKAKU MEETING-II」様が公開されているアメブロ記事「『宇都宮釣天井』開講」によると、今回の講談は先生の連続講談の60回目にあたるのだとか(追記:実際に、会場でいただいた第二回告知のリーフレットには「第六十一回」とありました。今までの回も、叶うなら全部参加したかった…)。同ブログ著者の玉井亀鶴(たまい きかく)さんによると、今回の「宇都宮釣天井」の前までは「仙石騒動」だったそうです。

参集殿のガラス扉を開き、会場の2階へ。当日はどこかの会社さん?がパーティを催されており、そちらの会場が1階、先生の講談が2階でした(実は当日、こちらのパーティのスピーチが2階まで聞こえてきて…^^; 先生のお話に被さってしまうシーンが10分くらい続いた場面がありました。会場の仕様から仕方ないのだと思いますが、その点はちょっと、残念でした)。

一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回(2019年1月24日)
一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第一回(2019年1月24日)
受付は2階です

(1) 受付で名前&スタンプラリーカードを提示

2階には受付が用意されており、ここで予約時に受付窓口の「影向舎(ようごうしゃ)」さんに伝えた名前を述べ、2,000円を支払います。連続講談の会の「スタンプラリー」カード、いわゆるポイントカードをお持ちの方は、ここでカードも提出する仕組みのようです。無論、筆者は初めてでしたので、この場で作ってもらいました。次の講談に参加すると、先生のお顔がポン!と押されるんですね。5回貯めればオリジナルグッズがもらえるということで、俄然、連続で参加するぞ!という気が高まります。思いもよらない仕掛けでしたので、このスタンプラリー制には胸が踊りました。スタッフさんも大変親切で、初心者に優しく接してくださったのが印象的です。

(2) 一龍斎貞橘さん・一龍斎貞友さんの高座も

会場は全席自由…というか、広いお座敷にちょうど良くふかふかの座布団がとんとん、と置かれている状態で、どこに座ってもOK、という方式でした。すでに用意してある座布団以外にも、座敷の後ろから新たに座布団を持って座られる方もおり、皆さん慣れてらっしゃる…と驚くばかりです。かっこいいなぁ…。なお、靴は袋に入れて持ち込む形式で、お話の最中にガサガサと音がならないよう十分に注意する必要があります。

さて、時間になり、いよいよ開演。本当に初心者で恥ずかしいのですが、当日は一龍斎貞水先生の講談だけなのだと思っていたところ、なんとお弟子の真打・一龍斎貞橘(ていきつ)さんによる『伊賀の水月 戸塚焼餅坂 鷲津七兵衛との出会い』と、真打・一龍斎貞友(ていゆう)さんによる『豊竹呂昇(とよたけろしょう)』が読まれました。

これには大感激。貞橘さんは、男性のフグリを長いものでエイエイ、と突くシーンで小ネタを挟まれ、客席は大笑い。「下品なものも美しくやるのが一龍斎だ」…だったかなぁ…、そんな一龍斎の流儀を貞水先生に教えられた、という、貞橘さんと貞水先生のエピソードが挟まれており、講談ビギナーも楽しく拝聴しました(本来なら貞橘さんも貞友さんも真打なので先生とお呼びすべきなんですよね、すみません…)。

貞友さんは、東西の講談師が一堂に会し、自分の先生とは異なる先生に付けていただいた演題を披露する「講談『伝承の会』」にかける予定のお話を読まれました(おそらくネタバレになるので白文字で隠します)。本をめくる姿も、女義太夫(おんなぎだゆう)・豊竹呂昇の声色で話される姿も、どれも凛々しく、格好良かったです。どこかで耳にした、しかも懐かしい声だな…と思って帰宅し調べてみましたら、なんと貞友さん、あの「ちびまる子ちゃん」のお母さんだったのですね。講談についてはまだまだ駆け出しも甚だしいので、こういった前情報もなく席について申し訳ないと思いつつ、純粋に楽しく、「呂昇よかったね…!」と感激いたしました。

(3) 圧巻の一龍斎貞水先生

貞橘さん、貞友さんのあと、仲入りを挟んでいよいよ一龍斎貞水先生が登場です。ふすまがスーッと空き、釈台を前に座られる先生の姿が現れた瞬間、お座敷の雰囲気が一度に変わりました。ピーン!という緊張感が漂うのと同時に、皆さん一斉に背筋を伸ばされていました。かくいう筆者も、その1人。空気の変わる、その一瞬をみんなで共有し、会場全体が先生のお話を聞くムードへ突入しました。

 本当に筆者は講談のペーペーなので、講談内容を解説することはできません。また、最初から先生の連続講談の会へ参加されている方に比べれば、この講談の貴重さ、ありがたさもきちんと理解していないように思えます。なので、どういったお話だったかは、FC2ブログで記事を更新されている「BON暗ぁじゅ」様の「講談メモランダム」様が大変詳細に解説されておりましたので、ぜひ他の方のレポをご覧いただきたいと思います(勝手に申し訳ありません)。特に「講談メモランダム」様はあらすじがじっくりと書かれていたうえ、先生が第一回を切られた箇所も反映されていたので、筆者自身もじっくり拝読し、より深い理解に繋げることができました。このように、どういったお話が第一回で披露されたのかは、他の方のブログ・Twitterなどでご覧いただくのが最適かと思います。

ただ、それでも感想を述べるなら…。僭越ながら申し上げるなら…。今から講談を楽しんでいきたいと考えている超・ビギナーからすると…。迫力・気迫・リズムにテンポに引き込まれ、すべてを”享受”している、と感じた約60分でした。間に挟まれる小話や先生の所感といった小さな話から、会場の外で起こったアクシデントまで(警察のサイレンが響き渡る場面がありました)が講談に折り込まれ、まるで最近起こった出来事のように感じ取ることができた時間は、至高のエンターテイメントだったと思っています。

特に、城主・本多上野介正純(ほんだこうずけのすけまさずみ)の口調は、本物のお殿様を目の前にしたような気がしてきて、身も心も冷や汗をかきました。まだ当日は寒かったですから、空調が整ってはいたものの、緊張の汗で身体中が余計にヒエヒエとしました。次回からは、いよいよ盛り上がるとのことで、とても楽しみにしております。会場を見渡しても、頬を高揚させてお帰りになる方が多かったように思います。18時半開演、終わったのは気づけば20時45分ごろで、贅沢な約2時間を過ごさせていただきました。は〜…次も楽しみだ…。

…なお、この「宇都宮釣天井」は高座に掛けられることが少なくなった貴重な読み物なんだとか。生で、しかも一龍斎貞水先生の高座で拝聴できる機会は超・希少ですね。

CD・DVDは講演特別価格500円から販売

さて、興奮冷めやらぬ状態で会場をあとに。最初は緊張していて何がなんだか見えてなかったのですが、帰り際にもう一度受付に立ち寄ったところ、受付ではこれまでの連続講談の会でお話されたCD・DVDが特別価格で販売されていました。

一龍斎貞水先生 連続講談の会のスタンプカード
一龍斎貞水先生 連続講談の会で購入したCD(左)と、
連続講談の会の「ポイントカード」(右)

筆者も、帰り際に貞水先生のCD「特別編 赤垣源蔵・徳利の別れ」を1枚500円で購入しました。通常は1,000円ということで、会場限定・半額ですね。なんとお得な…!なかには「〜の○回はありますか?」というような指定方法で購入されていた方もおり、講談のCDやDVDはどうやって購入するかの勉強になりました。ファンと思わしき方が何名か「え!本当にこんな価格でいいんですか…?」と驚かれていた様子も見かけました。うーん、やっぱりお得ですよね、安すぎると思いましたもの…ありがたやありがたや…(次も他のCDを購入予定です)。

一龍斎貞水 連続講談の会「宇都宮釣天井」第二回(2019年2月21日・木曜日)

第一回を聞き逃しても大丈夫。2019年2月21日(木)に行われる第二回では、18時半からの開演に先駆け、16時半から同会場で第一回のダイジェスト上映を行うそうです。もちろん、参加には予約が必要。この記事を書いているのは2月20日で、第二回の前日に記事をアップするなよ…と自責の念に耐えないのですが(汗)、少しでも気になる方はまず、参加方法の詳細などを「ようごうしゃチケットセンター」へ問い合わせるのが確実です。まずは一龍斎貞水先生のWebサイトの確認が一番安全ですね。

講談師 人間国宝 一龍斎貞水(公式Webサイト)

http://www.yougou.co.jp/teisui/

小ネタ:宇都宮の珍銘菓「釣天井」

講談に直接関係はありませんが、面白かった小ネタがひとつ。どうやら宇都宮には珍銘菓「釣天井」なる和菓子があるんだとか。先生はお店の名前をおっしゃいませんでしたので、帰宅して調べたところ、宇都宮駅から二荒山神社のほうへずいずいと伸びる大通り沿いにある「岡埜」さんで販売しているんですね。

食べログでヒットせず、公式Webサイトを探すとまったく違う市の(真岡市)のお菓子屋さんがヒットしたりと混乱しましたが、ようやく見つけた「ホテル丸治」さんがじゃらん内で更新しているブログでやっと詳細情報に当たることができました。第三回まで連続で参加する予定なので、最終回にはこの「釣天井」を差し入れしようか…と考えています。…そもそも一般客の差し入れって、講談界ではアリですか…?おこがましいでしょうか…。そして何個用意すればよいのでしょうか…。

うーん、まだまだ慣れないことばかりで…、いろいろ悩みますね…^^; ただ、講談が楽しく、豊かであることは間違いありません。まだまだ理解の足りないところがあるのは、これから学ぶ喜びにも繋がります。明日の第二回も、贅沢に楽しんできます!

らく@staff
  • らく@staff
  • 競馬、温泉、落語と講談が大好きな地方暮らし。個人の趣味サイト「くらしのおたより」を運営しています。サイト内の写真・文章の引用については「はじめに」をご覧ください。https://lifestyle-area.com/2017/04/14/hello-world/

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