【読んだ】模倣犯(上下)小学館 宮部みゆき
目に浮かぶ登場人物
宮部みゆきさんの作品のうち、しっかりと最後まで読んだのは「火車(かしゃ)」「理由」「ソロモンの偽証」の3作品です。手元に「ぼんくら」「誰か」「名もなき毒」が控えているものの、軽めの他作者作品に気移りしてばかりで、なかなか「模倣犯」にたどり着けないでいました。
今回の「模倣犯」。。。長い!とにかく長かった!しかし、読ませられた〜…!水を飲むのも、風呂で湯に浸かるのも面倒になり、眠る時間も減らして没頭しました。ほんの数ページだけ出てくる登場人物(たとえば上巻第2部終盤で登場する木村夫人)ですら、少しの言葉といくらかの行だけで、目に浮かぶほど鮮やかに描き出す筆致はやはり、宮部みゆきだからこそのものだと確信しました。息をつく間もなく、最後までグイグイと引き込む場面展開に圧倒される感覚は、まるで読むジェットコースターのようです。
結局分からなかった点(メモ)
※ここからネタバレあります(未読の方はお控えください!)
気持ちだけで読み進んでしまったため、何点か読み落としてしまった点があるように思います。もしくは結局書かれていなかった…?いやいや、そんなはずはあるまい。筆者の読み落としの可能性しかないのですが、結局分からなった点は下記の通りです。
- 芦原君恵(上巻 442ページで登場)がピースの捏造した手紙に抱いた違和感が「かなり長いあいだ、頑なに守られることになる」(上巻 476ページ)と、未来のある地点に対する予測として書かれている点は、下巻で前畑滋子に告白したことで沈黙が破られたということでよいか?
- 栗林とカズが、栗林の母の入院先へお見舞いに行くと電話で話しているシーン(上巻 635ページ)で、電話の切り際でカズが「あの――“女ども”なんて言い方は、やめなよ。」と諭すシーン。女ども、なんて誰か発言していた…?カズが早くから栗橋を疑っていることを示す重要なシーンだと思うのだけど、当の「女ども」というセリフがどこに出ているか、何度見直してもなかった…。
- 結局、電話相談にかけてきたカズの声が入っている録音テープは何かの役に立ったのか?(これは下巻のそのあと、読者の想像に委ねられているのかな)
- 子供が見つけた携帯電話(下巻 473ページ)も捜査に使われたのか?(これも下巻のその後に含まれるのかな)
- また手紙に引っかかって情けないのだけど(気になる)、カズの妹の由美子は、結局カズが視覚障害を抱えていたことを把握していないのでしたっけ…?もしその事実に気づいているなら、兄が文字を書けない点について言及がないのが気になる。高井父が倒れて休業する際に字を書いたカズについては「バカ丁寧な言葉が和明の字で」(下巻 7ページ)とあるから、ピースの仕込んだ偽装文書が、スナップ写真に写っているとはいえ、兄の書いたものではないと冷静に判断できれば、思い込むこともなかったのではないだろうか…。
- 句点モレ 下巻 584ページ 上段 「…捜査本部は考えているのではないか。」(確認された版は2001年5月10日 第2刷なので今はもう直っているかもしれませんね)
もっとじっくり読んだら、一文一句飛ばすことがなければ上記のような些細な疑問は解決するのでしょうけど…残り体力が少ない状態で、読み返すのはいま、しんどいな…^^;
読後の余韻のままに「あとがき」を読み終え、驚いたことがひとつ。なんと「模倣犯」は1995年11月から1999年10月まで、およそ4年間にわたり「週刊ポスト」で連載されていた作品なのですね。それだけ長い間、途切れることなく筆を運び続け、本にするというのは…想像もつかない偉業のように思えます。
宮部みゆき熱が冷めないうちに、次はもう一度「火車」を読む予定です。なお、今回は図書館から借りた上下巻で完読しました。上巻は明らかに水濡れや食べカスの挟まり、角折れなどで汚いのに、下巻は紙だけ古く、状態はいいという…。明らかに、みんな下巻読んでないでしょ(笑)。途中で購入しなおしたのかもしれませんが、背表紙の日焼けは上下巻ともまったく同年月を思わせるそれですからねぇ… 多分… 最後まで読めてないのではないかなぁ…