漫画「重版出来!(じゅうはんしゅったい)」に登場する出版関連の仕事・登場巻

「重版出来!」(じゅうはんしゅったい!)
松田奈緒子
小学館(ビッグコミックス)

新人漫画編集者が主人公の業界漫画。2016年にはTBSでドラマ化されました。2020年5月時点では、14巻までが出版されています。AmazonKindleUnlimited会員なら、1〜3巻も無料で閲覧可能です(5/10時点…ステイホーム週間中に気づけばよかった…!)。

最終面接でイッポン!新人編集者・心誕生!

柔道のオリンピック日本代表に選出されるほどの実力を持ちながら、怪我で選手生命を絶たれた主人公・黒沢心(くろさわ こころ)。大学の就職活動をきっかけに、柔道に打ち込む契機や勇気を与えてくれた漫画に携わろうと、持ち前のひたむきさと明るさで大手出版社・興都館の就職試験に挑戦!背丈は小さいのに、がっしりとした体格と潰れた餃子耳(武道者の特徴)、愛嬌たっぷりの外見から「小熊」とあだ名され、入社前から話題を呼ぶのでした。

持ち前の努力で堅実な努力を重ね、就職試験の筆記試験は見事、満点で通過(うらやましい)。面接試験もパスし、遂に最終面接へ。その結果は…見事、一本勝ち!まさに“技あり”の就職試験でした…。ネタバレになるので、詳しくは語りません。

さて、そんな心が配属されたのは、週刊コミックス誌「バイブス」。先輩社員や上司の熱烈指導や超・個性的マンガ家、本に関わる取次店や書店、表紙デザイナーやWeb制作会社などなど…、たくさんの業界人と関わりながら、新人編集者として奮闘します。

本を取り巻く全ての職が登場

いわゆる、漫画編集者に焦点を当てたお仕事漫画系かと思って手にとったところ、意外や意外、漫画編集者だけでなく、本に関わるすべての職業が登場しているのではないか、と思うほど豪華な業界漫画でした。

編集者・漫画家以外で、作品内に登場した職業は次の通り。

業界いろいろ

  • 印刷会社(プリンティングディレクター):5巻収録「第25刷 グラビアは雑誌の花なのだ!」で登場。写真修正担当者の奮闘が描かれる。
  • ブックデザイナー(装丁家):5巻収録「第27刷 美の巨人たち!I」「第28刷 美の巨人たち!II」で登場。本の表紙をデザインする。
  • 製版:5巻収録「第27刷 美の巨人たち!I」「第28刷 美の巨人たち!II」で登場。ブックデザイナーによる原画の色を生かす。色校の製作を担当。原稿から印刷データを作成する製版所のオペレーターは9巻「第50刷 ハッピー!」で登場(これより前の巻でも1度出ています)。
  • 書店員:漫画家・編集者と同様に、シリーズ全体で登場。5巻「第30刷 右側に気をつけろ!」で書店員の本懐を垣間見ることができる。同話では印刷所(製版所?当方素人のため違いが明確でなく、誤っている場合は訂正致します)パート職員の葛藤も描かれる。6巻「第34刷 北の書店から!」では地方書店と店長が登場。地方での出版状況についても触れられる。
  • バイク便ライダー:7巻「第38刷 イージーじゃないライダー!」で注目。超急ぎの即日便配送に欠かせない要。
  • 付録設計士:9巻「第53刷 やまおりたにおり!」で丸々紹介。「重版出来!」の中で個人的に一番目からウロコだった職業。
  • 書体デザイナー(フォントデザイナー):10巻「第54刷 声のかたち!」に登場。読んでいて面白い回。
  • 映画監督・脚本:プロデューサー、出版社の映像メディア部と連携。10巻「第57刷 誰がための映像化!」「第58刷 ベスト・ベスト・ベスト!」と「第59刷 何千本ブーメラン!」冒頭で登場。
  • カメラマン(出版社所属):11巻「第60刷 愛したいんだ愛されたいんだ!」「第61刷 続・愛したいんだ愛されたいんだ!」に登場。
  • 電子書店:実店舗の書店員から、電子書店に転職した男性が主軸として登場。11巻「第62刷 二作目のジレンマ!」「第63刷 負けたことは忘れていい!」「第64刷 星の光!」。
  • Webデザイン会社:12巻「第67刷 ○○○○出発!(ある意味でネタバレになるので、いったん伏せます)」に登場。バイブス編集部の電子媒体立ち上げに向け協働する。

出版社内

  • 制作局(企画課・資材課):漫画に限らず、出版社内の画集やムック本、文芸単行本なども担当。印刷所の手配や進行スケジュールの管理、コスト計算や紙の手配まで多岐にわたる業務をこなす。5巻収録「第27刷 美の巨人たち!I」「第28刷 美の巨人たち!II」で登場。
  • 営業:漫画家・編集者と同様に、シリーズ全体で登場。特にAmazonKindleUnlimitedで無料お試し読みが可能な1〜3巻でフィーチャーされています。8巻の第45〜47刷「目指せ平台!序破急」では取次店との交渉シーンが描かれれる。
  • デジタル局:読者データを管理・分析。13巻「第75刷 新しい売り方」で登場。
  • 校閲:6巻収録「第35刷 きみを見守りたい!」に登場。文章の誤りを正す校正作業だけでなく、物語を骨太にする校閲の神槌がチラリ。同巻「第36刷 きみを守りたい!」では校閲を専門とする校閲専門会社が登場。

早く続きが読みたい…!

作品中では、12巻以降から電子出版・電子書籍・Web媒体に関する話題が増えていますね。時代の潮流に合わせたネタも拾われており、著者の松田先生による緻密な取材の賜物なのだろうと予測できます。巻末の「チーム重版出来!」ページに名を連ねている方々が、どんな気持ちで作品を大事に世に送り出しているか…、読めば読むほど、感慨深くなります。

今までは、漫画を出版するには編集者と漫画家さん“だけ”が大事であるかのように思っていましたが、「重版出来!」を読んでその認識が変わりました。本は好きですが、出版業界については全く無知の素人(「バクマン!」すら完読していない)なので、お恥ずかしながら作品で読まないと耳にしたこともない職業がたくさんありました。出版業界への就職を目指す人はもちろん、本が大好きな人、ものづくりに興味がある人、純粋にお仕事系漫画が好きな人にもオススメしたい漫画です。

追伸…14巻は未読のため、仕事一覧に反映されていません。3蜜に注意しながら書店に行くか、電子書籍で購入するか、迷うところです。途中まで書籍で集めていると、途中から電子版に切り替えるのは気が進まないんですよね…。とはいえ、中田先生の今後や、○○さんの結婚事情についても気になりますし…、14巻に手を伸ばしたい気持ちは高まるばかりです。

らく@staff
  • らく@staff
  • 競馬、温泉、落語と講談が大好きな地方暮らし。個人の趣味サイト「くらしのおたより」を運営しています。サイト内の写真・文章の引用については「はじめに」をご覧ください。https://lifestyle-area.com/2017/04/14/hello-world/

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。